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基本トレーニング/物編

基本トレーニング/物編

人が日常的に行っている基本運動に木や石、水といった「物」を関わらせ、「不安定」を作り出す物編。「運動」+「物」により起こる不安定から無意識の運動が意識化される。その運動を反復し、安定へと運動を修正する〈身体〉を観察することによって、その潜在的能力を発見する。

左:日常的歩行 右:棒ありの不安定な歩行     

例えば、「歩く」「走る」移動する運動に木を関わらせてみる。右手に長物の木を持って「走る」。そうするとだんだん走っているうちに右足の歩幅が広くなってくる。どうしてそうなったのかを考えると「走る」仕組みがよくわかってくる。人が走る時、2本の足と腕を振って推進力を生み出すことで前に進んでいく。左右同じ力の振りをすることによってバランスが取れ、真っ直ぐ走ることができるのだ。しかし、右手の振りが少なくなり、左とのバランスが崩れると、全体のバランスを取るために右足の歩幅が大きくなるのである。

左:歩行時の持ち方 右:走行時の持ち方    

次に長くて重い棒を肩で担ぎながら「歩く」を行なってみる。この際は自分の重心に対して物の重心を重ねるように安定させて持つのが一般的である。こうすると物は肩の上にふわふわと乗り、その重さは身体の骨格が支えて楽に歩ける。では、そのまま「走る」をしてみるとどうだろうか、安定した持ち方はたちまち不安定へと変化する。物が身体の方に当たる部分を支点として、左右の重さが均等になっているために簡単に動いてしまうのだ。

では、あえて肩の支点んを中心とした重さを前後で不均等にしてみるとどうだろう。不均等にすることで物の重みが身体を後ろに引く重さが加わる。それを均等にするために〈身体〉を丸めて前を持ち、〈身体〉の力を前に加えると安定するようになる。物がしっかりと肩に合い、走っても動かない支点ができる。

このように「物」を基本運動に関わらせるだけで〈身体〉の様々な可能性を発見することができる。「物」の重心や形などが〈身体〉に対してどのようは変化をもたらすのか?そして、それに対して〈身体〉はどのように答えるのか?無意識に反復させ、時に意識的に観察することを繰り返していくことで分かるようになるのである。

この「物編」のトレーニングを実践していくと私たち人類の祖先が、そこら辺にある木や石などの事前物を手に取り、そこから道具を見出してきた歴史を辿ることができる。〈身体〉は「物」と合わさることによってに本来の複雑な身体機能を生み出すことができるのである。